Last 1 Hour
退社前の1時間で書けるだけのコラム


病人よ待ち時間に怒れ!

昨日(8/31)から今日にかけて3ページも書き上げている。これは何も会社をさぼって(まー結果的には会社には行っていないから同じか)いるわけではない。実は病院の待ち時間中に書いているのだ。1時間、2時間なら早いほう。3時間は当たり前。4時間あたりから「今日は遅いなー」などと感じていなければやってられないという、この病院の「待ち」のシステムはいったいどうなっているのだろうか?

だいたい、病院という所には、程度の違いこそあれ基本的には体が弱っている人がやってきているのだ。その上必ずしも快適とは言えない、病院の待合室で何時間もほっておかれたら、多少の元気が残っていても全て吸い取られてしまう。術後一応快復している私だって、4時間も待たされた日には、もう会社には行きたくないぐらい疲れ切ってしまうのに、これが「座っているのも大変」という状態の患者ならどうなるのだろうか?

問題はこれに対して病院がシステム的に対応しようという気がないという点である。私が通っている2つの総合病院と1つの個人医院ではどこも「先着順受付」で「呼ばれるまでぼーっとまってろ」方式である。しかも、「早めに予約されたい方は朝6時から整理券をお取りください」とまで看板を出しているのだ。病院は9時からだというのに、3時間も待てというのか?それとも、整理券をとってから家に帰ることができるご近所さんだけの優待サービスのつもりなのだろうか?とどめは、「お呼びするときにいらっしゃらないと、診察できない場合がございます」という脅しまで書いてあったりするのだ。

一方、待ち時間に対してクレームを入れると(クレームを入れている私も私だが、本当にきつい時はそうでもしないとやってられないのだ)、どの病院でも「お気持ちは分かりますが『皆さん待たれていますから』」という答えが返ってくる。そんなことは私だって分かっている。だれも、他人を押しのけて優先してくれと言っているわけではない。予約を入れた時点で「だいたいどのくらいの時間になるのか」示してほしいと思っているのだ。朝の9時からまって、午後2時に診察開始では、昼御飯も食べられないし、薬も飲めない。こういう空腹で治療行為もできない状態に放っておくことが病院のやることなのか?予約時に昼過ぎになりますと分かっていれば、計画も立てられるではないか!

さらにつめよると「急ぎの患者さんもいらっしゃいますし、皆さんの診察したいというご希望にできるだけ応えようと思うとどうしてもお待ちいただくことになるんです」という回答がだいたい返ってくる。何も、病院が手抜き治療をしているとか、熱意がないとか言っているのではない。患者は誰しも一刻でも早く医者に診てもらいたいと思っているし、希望する医師に診てもらいたいと思っている。だから、それに対して「システム」を作ってできるかぎり患者の快適性を高める努力をすべきだと言っているのだ。はっきり言おう、気持ちはどうでもいいのだ。具体的に患者が楽になる方法論が必要なのだ。この部分が全く欠落している。そして、その全てを「患者が多くてさばききれない」という「患者の責任」に転嫁する論法の上に安住している事を問題としているのである。

経験からいくと、多くの歯科医が30分単位か1時間単位での予約診療をしている。こういった歯科医でも、緊急の患者にも対応している。むろん、命の危険の可能性が低い診療だからこそ可能とも言えるわけだが、全くまねができないわけでもあるまい。継続的な診療であれば、次回の診療にかかる時間は予測できるわけだし、新患が一日平均でどれくらいくるかも予測可能なはずだ。また、予定外の新患や命に関わる急患が来たのならその分予約時間がずれますというアナウンスを出せばよい。また、前倒しが可能なようなら前倒しもすればよい。前倒しを期待してくる患者もいるだろう。これだけでも、待合室のあのギスギスした、それでいて「クレームを入れると治療に指し障りがあるんではないか」といったおどおどした雰囲気が和らぐはずだ。

患者にとって、医師は「命を人質」としている店主のようなものである。クレームも入れたいし、サービスが悪ければ乗り換えたいのだが、治療がうまくいっている限りはそうした選択は非常に難しい。いや治療がうまくいってなくったって難しい。だからこそ最大限のサービスを自発的にしていくべきではないのだろうか?


(c) 1998, Kenji Yamashita
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