インプレスグループでIT関連メディア事業を展開する株式会社インプレス(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:小川 亨)のシンクタンク部門であるインプレス総合研究所は、定額制音楽配信サービス(サブスクリプションサービス)の利用実態調査を実施し、その調査結果を発表いたします。
日本国内において2012年より提供が始まっている定額制音楽配信サービスは、サービス提供者が用意する楽曲をいつでもどこでも聴き放題な点が共通の特徴です。2017年には音声AIアシスタントを搭載する「スマートスピーカー」が国内で発売され、その主な機能の一つとして定額制音楽配信サービスの利用が注目されています。また、「スマートスピーカー」を販売しているAmazonからも新たなサービス「Amazon Music Unlimited」が開始され、競争は激化しています。
調査結果のハイライトは以下のとおりです。
本調査はスマートフォン及びタブレットでインターネットを利用している人を対象に行なっています。調査対象者全体に占める定額制音楽配信サービス利用率は、「有料プランを利用している」(※トライアルも含む)が14.1%となり昨年調査よりも2.2ポイント増加しました。また、「無料プランのみを利用中」が6.5%、「過去に使用したことがある」が12.4%と続きます。これらをあわせた利用経験者の比率は33.0%となりました。
年代別にみると、有料プランの利用率は男性50代が18.3%で最も高く、男性40代が17.9%、男性20代が17.6%で続きます。女性より男性の方が利用率は高い傾向が見られます。一方、無料プランのみの利用率は女性10代が12.7%で他の年代よりも突出して高い比率です。
スマートスピーカーの製品名を挙げた上で、世帯で保有しているか、あるいは知っているかを調査したところ、「世帯で保有している」と答えた人は7.4%、「どのような製品かを知っている」が27.3%、「名前をきいたことがある」は28.9%となりました。なお、保有するスマートスピーカー(複数回答)は、Google Home/Google Home Miniが39.2%、Amazon Echoシリーズが32.4%、LINEのClova WAVE/Clova Friendsが21.6%と続きました。
スマートスピーカーの保有別に定額制音楽配信サービスの利用率を見ると、世帯にスマートスピーカーがある人の有料プラン利用率は43.1%と高く、非保有者の11.8%と比較すると大きな差が見られます。
【図表3. スマートスピーカーの保有率】
【図表4. スマートスピーカー保有別定額制音楽配信サービス利用率】
定額制音楽配信サービスを利用したくない理由は「毎月お金を支払いたくない」が43.3%と高く、「料金が高い」「無料のコンテンツのみで楽しめる」が続きます。特に女性の10代や20代でこれらの理由の比率が高い結果が見られます。
続いて、有料プランと無料プラン問わずに定額制音楽配信サービスを現在利用していると回答した人に対して利用実態の詳細を調査しました。現在メインで利用してるサービスは、Amazonがプライム会員向けに提供している「Prime Music」が36.4%で最も高く、無料プランのある「Spotify」(16.5%)、無料ユーザーでも1曲30秒間聴くことができる「LINE MUSIC」(11.3%)が続いています。
一方、有料プラン利用者に限定すると、トップは同じく「Prime Music」(47.6%)で、以下、「Apple Music」「LINE MUSIC」「Spotify」「dヒッツ」と続きます。昨年調査と比較すると、「Prime Music」の比率の増加が顕著です。
性年代別にみると、男女13-19歳、女性20代では「LINE MUSIC」の利用者が最も多く、その他の年代では「Prime Music」の利用者が最も多くなっています。
【図表6. メインで利用している定額制音楽配信サービス(左:全体、右:有料プラン利用者のみ)】
【図表7. 性年代別 メインで利用している定額制音楽配信サービス Top5】
現在メインで利用しているサービスを選んだ理由では、「月額の利用料が安い」(21.3%)、「他サービスの会費によりおまけ的に利用できる」(21.3%)、「好きなアーティストの楽曲が配信されている」(21.1%)、「楽曲の数が多い」(21.0%)、「ずっと無料で利用できる」(20.4%)、「オフラインで再生できる」(19.9%)、「コストパフォーマンスがよい」(18.7%)が20%前後で並んでいます。納得して支払える程度の料金、通信環境によらず音楽を楽しめる利便性と、聴き放題のアーティストや楽曲数等がサービスの選択基準になっています。
一方、定額制音楽配信サービスの利用のきっかけでは、「Prime Music」の利用者が多いことから「他サービスの会費によりおまけ的に利用できるから」(21.3%)がトップで、「CDを買ったり借りたりするより、金額的にお得だと思ったから」(17.7%)、「キャンペーンがあったから」(16.9%)が続きます。「スマートスピーカーを入手したから」は全体では3.4%ですが、スマートスピーカー保有者に限定すると19.4%となり、「他サービスの会費によりおまけ的に利用できるから」(20.9%)に次ぐ比率です。
【図表8. メインで利用するサービスを選んだ理由(複数回答)】
【図表9. 定額制音楽配信サービスの利用のきっかけ(複数回答)】
定額制音楽配信サービスを利用する頻度では、「ほぼ毎日」が20.5%、「週に2~3回」が18.7%で続きます。65%のユーザーは週に複数回利用すると回答しており、男女とも10代で80%前後と高い比率となっています。
一方、利用する機器に関する設問では、本調査はスマートフォン・タブレットユーザーを対象としていることから「スマートフォン」が89.2%と高い結果となっていますが、「スマートスピーカー」の利用も8.9%となっています。「スマートスピーカー」で利用する人の64%は、スマートスピーカーによって定額制音楽配信サービスの利用頻度が増えたと回答しています。
【図表10. 利用頻度】
【図表11. 利用する機器(複数回答)】
【図表12. スマートスピーカーによる定額制音楽配信サービス利用頻度の変化】
定額制配信サービスを利用した満足度では、「非常に満足」が21.6%、「やや満足」が49.2%となっており、両者をあわせるとユーザーの70.8%が満足していると回答しています。有料プラン利用者に限定すると満足度は72.1%となり、無料プランのみの利用者(67.4%)よりも高い満足度です。
一方、不満に思うことでは、「好きなアーティストの曲が配信されていない」が39.7%で最も高く、「楽曲数が少ない」が22.5%と続いています。利用料を支払っている有料プラン利用者の方が無料プランのみの利用者よりもこれらの項目を不満に思うユーザーの比率は高いです。
【図表14. 定額制音楽配信サービスで不満なこと(複数回答)】
今回の調査で利用者が多かったサービスの概要と楽曲数をまとめると下表のとおりです。
楽曲数が多いサービスでは「Apple Music」(4,500万曲以上)、「LINE MUSIC」(4,400万曲以上)、「AWA」(4,300万曲以上)が挙げられます。ただしこれらは海外アーティストを含む総数です。
一方、国内の人気アーティストの指標として「オリコン 2017年度年間ヒットランキング アーティストトータルセールスTOP100」を用いて、このTOP100に含まれる人気アーティストの楽曲が配信されているかどうかを調査すると、「dヒッツ」が79アーティストで最も多く、次いで「うたパス」が77アーティストとなっています。携帯電話事業者が運営する両サービスは、ラジオ型であるため多くのサービスと比較し半額程度の月額料金ですが、月間10曲まで保存することが可能です。また、楽曲数は多くはありませんが「国内人気アーティスト」という強みを持っています。
ただし、全てのサービスで昨年調査時よりも「国内人気アーティスト」の配信数は増加しています。ランキングによるアーティストの変動という要因もありますが、配信されているサービスが増加したアーティストも多数存在しています。また、多くのサービスの楽曲数も増加しています。ユーザー調査でも課題に挙げられているユーザーの好みのアーティストや楽曲数、注目されるスマートスピーカーへの対応、料金プラン、アプリの機能や使いやすさなど様々な面で向上が図られ、今後もより洗練したサービスへと競争が続くことが予想されます。
調査対象 :株式会社コロプラ スマートアンサーの保有するモニター
有効回答数 :20,271人に対して定額制音楽配信サービスの利用状況を調査し、現在利用していると回答した人に対して詳細な利用実態を調査(有効回答数1,300)
サンプリング:通信利用動向調査(総務省)における性年齢階層別のスマートフォンでのインターネット利用人口構成比に可能な限り整合するように抽出
比重調整 :回収率が性年代別に異なり母集団を正しく推計することが困難であるため、利用率に関する集計は上記の性年齢階層別のスマートフォンでのインターネット利用人口構成比を用いて比重調整を行っている
調査手法 :スマートフォン上でのウェブアンケート
調査期間 :2018年3月5日(月)~3月9日(金)